すきなひとが眠れますように

青くちいさなハルシオン
引き出しをあけたら蝶が飛んで
そばに野良猫がみえたりした
まぼろしみたいだね

海は猫がたくさんいる
そっぽばかり向いてごめんね
綺麗なひとが通る度 繋いだ手に力を込めたり
そんなことしかできなくてごめんね
この海沿いのカフェ、夏祭りのとき大変なんだよ って
お祭り、誰ときたの?
聞けなかったな

雨のにおいがする
半分にされた月をみて
月が綺麗だね だとか
やっぱり照れくさいよ
風が冷たい
空はクレヨンの蒼じゃなく
何にもわからないふりしないで

おれんじいろの踏切は
赤色が転々とうつりかわる
だれも来ないのに待ち合わせをしているの

昨日より月はまるくなってゆく
ビスケットをきれいに半分こできないみたいに
月は満ちたりてゆく
電車はすぐに消えてしまう
もう一本、遅らせて帰ろうか
今日は何日だろう
もうどこにもいきたくないよ
ふたりきりの孤独でいたいの
ずっとこの気温だったらいいのに って
秋がすきだったね

眼にうつるネオンは縦長に歪んでく
ひかりはまるくなる 革靴のふちが波を立てる
そんなこと知りませんように


空を泳ごうか
泳げないじゃん、溺れてしまうよ
そのときは助けにきてくれるでしょう


じゃあ、またね
次はいつ会えるかな


神様、どうか

すきなひとがこわい夢をみませんように
すきなひとがよく眠れますように